H様はアールイー・ホームで以前リフォームをされ、足が不自由な奥様のために玄関アプローチをスロープに改修された経緯があります。今回はご主人の退職を機に内装をバリアフリー化したいというご要望でした。ところが打合せにお伺いすると、奥様は「まだ使えるし、もったいない」となぜか消極的です。それもそのはず、現在のお住まいはご主人の度重なる転勤と引越しの末にようやく建てたこだわりの家。動線を考えて設計し、キッチンやバスルームは奥様が大好きなワインレッドのタイルで彩られていました。「リフォームすることで思い出が消えてしまう。暮らしがガラリと変わってしまう。自分のために多額のお金を主人に使わせるのは申し訳ない」とおっしゃるのです。これを聞いたご主人は、「冬の朝、キッチンの足元に小さな電気ストーブを置いて、そこから離れられない君がかわいそうだ。寒いと痛みが増すようだし、料理が大好きで頑張り屋の君のために、僕がしてあげられることを全部してあげたい」と、普段の温和な表情を崩して大きな声を出しました。最後は奥様が「ありがとう」と言って涙を流し、その一部始終を目にした担当者は大いに心を動かされたそうです。ショールームへご案内した際、奥様が片手でどこかにつかまりながら歩く姿を見た担当者は、最初に考えていたプランをリセットしました。ショールームスタッフと相談し、技術力とチームワークで、奥様に安心して使っていただけるコの字型のキッチンを再度ご提案するとともに、間取りや設備の一つひとつを念入りにチェックしながら計画を進めました。

冬場の足の痛みが少しでも和らぐようにと、LDKには遠赤タイプの床暖房を導入。2日以上かけて丁寧に組み込んだキッチンは、職人さんの奮闘で見事な仕上がりとなり、白い人造大理石のカウンターとワインレッドの扉、壁が美しいコントラストを見せています。収納は、かがみこまなくても出し入れできる引出し収納を採用し、身体への負担を軽減しました。さらに、お風呂についてもショールームで実際に体験していただき、浴槽に入った時、足をしっかり踏ん張ることができるか、動作に無理はないかなど、一つひとつチェック。高断熱仕様の壁と床の1坪サイズのバスルームには奥様ご希望のミストサウナが付いています。このほかにも、通常より座面が高くて使いやすいトイレ、室内を安全かつスムーズに移動できるレイアウトなど、奥様への配慮を細部まで徹底。ご主人は「楽しそうに家事をする妻の姿を見ると、リフォームして本当によかったなと思います。時々、遊びに来る孫も床暖房のリビングでゴロゴロ転がって大喜びしていますよ」と語ります。互いを思いやる気持ちから始まったH様邸のリフォーム。暮らしが変わることへの不安はいつの間にか消え、満足と喜びに変化。思い出が消えることへの無念は、永遠に続く夫婦愛が癒してくれたのではないでしょうか。古い台所にあったタイルに家紋を彫り込んだ担当者手製のプレゼントでラストを飾り、喜びの笑顔で幕を閉じることができました。

床暖房を完備したLDK
寒い冬の朝も足元からポカポカと温まります